学びの回廊は、オーダーバウンドの3つの聖地の1つだ。小規模の衝突を除けば、この地では長い間、戦争は発生していない。学びの回廊の監督官は皆、住人の平穏な生活のために尽力していたが、その方法には眉をひそめるようなものもあった。先代の監督官の最大の功績は、在任中に『学問のためのデリカシー』という編集物をナルシア全土に配布したことだ。専制的なマエストロは、美しい旋律が人々を元気づけると信じて、一日に一度、オーケストラと一緒に「学問のソナタ」を指揮することを習慣にしていた。そんなマエストロが「学問のソナタ」の壮麗なクライマックスに没頭している時に、戦争の知らせが届いた。その日、音楽は不意に鳴り止んだ。「根絶者め」。報告書を読む専制的なマエストロの表情からは、普段の冷静さは鳴りを潜め、怒りが顔を歪ませていた。顔をしかめつつ、彼は演壇に文書を置いてから指揮棒を掲げた。「久方ぶりに、戦争の指揮を執るとしよう」 |
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キャッティ・スピリットは、目の前の精鋭軍隊に驚いたていた。学びの回廊の住人は皆、悠々自適の暮らしを謳歌している。ここで誰かが軍隊を訓練することなど金輪際ないだろうと、頭の固い猫の精霊は思っていたのだ。 キャッティ・スピリットの驚きをよそに、コズミックボクサーは群衆に向かって挨拶を続ける。回廊全体にその大きな声がはっきりと響き渡る。 "……平和な時代であっても危険に備えるべきだ。戦争が間近に迫っている今、我々の方がより有利に戦える。" そう言うと、専制的なマエストロの返事を待ったが答える代わりに、ふん、と鼻息をひとつ鳴らした。 その憮然とした態度に、コズミックボクサーは怒りを覚えた。これからの激動の時代を生き抜くためには、規律と強さが必要だと確信しているからだ。そしてそれは、学びの回廊の悠々自適な生活により、長く忘れ去られてしまったものであった。 "それは、どういう意味だ?"と叫んだ。 その時初めて専制的なマエストロが口を開いた。"おまえが秘密裏に軍隊を訓練している理由なんてどうでもいいということだ。現在の勢力図を考えると、確かに助けにはなるがな。"そう言って口を閉ざすと、まるでコズミックボクサーの怒りを楽しむように一瞥する。"何はともあれ、これからはこの私がおまえの軍隊を指揮するのだ。" |
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専制的なマエストロとコズミックボクサーは近頃、火と水のように相容れない関係になっている。回廊の監督官はあらゆる側面の管理と統制を望んでいるが、軍の創設者であるコズミックボクサーが強く反対している。太古の槍兵はコズミックボクサーが怠惰であるか、対立している監督官に報告したくないのだろうと考えている。彼は、専制的なマエストロとコズミックボクサーの性格の不一致による対立に動じていない。2人がただ事を難しく考えすぎているだけだと見ている。問題は、ナルシア全土に脅威をもたらす巨大な根絶者の軍隊だ。太古の槍兵は周りに倒れた数多くの死体の1体から槍を引き抜く。彼らは根絶者の軍隊で名高い危険な大将たちだ。太古の槍兵が背負うものはただ1つ、専制的なマエストロとコズミックボクサーが前衛指揮を完全に承認しているという事実だ。そのため、それほど難しく考えることもない。ここにいる皆が学びの回廊の勝利を望んでいる。ここにいる皆が根絶者の敗北を望んでいる。太古の槍兵が両手に槍をもって前進するには、それを理解しておくだけで十分だ。 |
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